数々のトーナメントを制してきた会長にとっての結論は釣りは競うものではない。ということ。
「釣りは競技に走ったらあかん。ほなけどトーナメントで優勝するんだったらまぐれで優勝してもしゃあない。わいは必ず狙って釣って優勝する。そのほうが結果は早いわ。」
今回はグレ釣りのタナに関して、会長の基本的な方法を説明します。
それではいってみましょう!
「ウキ下はビシッと合わせたほうが勝負は早い」
〇垂直方向で撒き餌に合わせる
ここでは、グレのタナとウキ下の問題を取り上げる。
刺し餌と撒き餌を合わせることとウキ下は、一見関連がないように思えるかもしれない。
しかし、いくら水平方向で合わせても垂直方向で合ってなければグレは釣れない。
ウキ下3ヒロで流しているのに撒き餌は2ヒロ、または4ヒロで流れていたとしたら、仕掛けを包むことなど到底できない。
これが1ヒロや1ヒロ半なら合わせやすい。
目で見えるし、誤差も生じにくい。
ところが竿1本半とか2本とかタナが深くなると、垂直方向で合わせるのが非常に難しくなる。
松田いわく
「上から撒き餌をする釣りはええとこ竿2本までだろうなぁ。3本とか4本になったらよう合わさんやろう」
前回伝えた通り、底近くになればなるほど潮は複雑になる。
それを読んで、刺し餌を合わすのだから、至難の業といってもいいだろう。
表層流が道糸を引っ張るし、誤差も大きくなる。
〇餌が残るか盗られるか
松田がウキ下を設定する場合、刺し餌の有無を基準にすることが多い。
餌を盗られるときは、魚の姿が見えなくても、盗られなくなるまで浅くしてゆく。
仮にウキ下3ヒロで餌を盗られたら、どんどん浅くする。それで、1ヒロまで上げると餌を盗られず、それでもグレが食わなかったら、再び下げてゆく。
3ヒロより深くしてまた餌を盗られなくなったら、1ヒロから3ヒロの間が魚(グレもエサ取りもいる)のタナだと判断する。
次にグレのタナとエサ取りのタナを区分する。
例えば、2ヒロで餌がなくなったり残ったりすれば、最初はそこを徹底して攻める。
釣れなければまた探ってゆく。
逆に何度流してもアタリが無く、刺し餌も無くならないときは餌を盗られるまで深くしてゆく。
ガシラなどの根魚が釣れたら、それでは深すぎるから今度は浅くする。
ウキ下を浅く、深くするときの程度は状況による。
20~30㎝から、多いときは一挙に1ヒロ移動することもある。
反対に5~10㎝刻みで変える場合もある。
例えば、ウキ下4ヒロで食っていたのが釣れなくなったとしたら、グレは浮いている可能性がある。その時は一挙に1~2ヒロ浅くする。4ヒロから30~40㎝上げたところで、浮いたグレにはとても対応できない。
〇グレのタナはよう変わる
25~30㎝のグレが湧くと、最初の5.6尾はポンポンと釣れる。
しかし、その後は、ウキが沈んでも鈎掛かりしにくくなる。
釣れたグレだけを見ても、最初は飲み込むほど食いつきがいいのに、だんだん食いが浅くなっている。これはグレの警戒心が強まったからで、タナも深くなっている。
そんな時は昔であれば釣り場を休ませたほうがいい。
だが、今は釣る時間が短いから、そんなことはできない。
グレのタナが深くなったなら、ウキ下も深くするしかない。
「よう食う時だったら、必ず1尾ずつウキ下を変える。昔はそうではなかったけどな。今は2.3尾釣ったらパタッとタナが変わる」
ただし、何も考えずにただウキ下を変えているだけではない。
グレに食わせたいときは、仕掛けをどのくらい張って、ハリスをどのくらいの角度にしているかを見ておく。ウキ下2ヒロでも飛びつかせて食わせたんだったらもう少し深くする。
1ヒロ半でもピシッと張って食わせたんだったら、ウキ下は浅くする。
目的は自分の動作を減らすところにある。なにもせず、ほったらかしていても食う状態にすれば、少しでも手が抜ける。余裕が出来れば他に回せる。
他とは
「ピタッと合うたら、もうちょっと浮かせてやろうと思う。1秒でも早く食わせるためにな」
単に、アタリが出た、グレが食ったにとどまってはいけない。
〇深くしたらまた浅くする
厳冬のころ、全く刺し餌が無くならないという場面によくお目にかかる。
時間をかけて少しずつ餌を撒き、ウキ下を深くしていって、竿2本で何か魚が釣れたら、それが今日のタナだと信じてしまう。刺し餌がなくなっただけでも、水温が低いから浅いところには魚がいないと思ってしまう。
ところが、時間が経って潮がよくなり、撒き餌が効いてくると、グレは浮いてくる。
特に尾長はこれが多い。それなのにウキ下は竿1本半~2本と深いままでは、まず釣れない。
これは、松田に言わせると人間心理が影響しているんだそうだ。
一旦深くしたウキ下を浅くするのに、ものすごい抵抗があるという。
しかし、考えてみれば、どうせ釣れないのなら、一度、2ヒロまで浅くして、また深くすることを試みてもいいのではないだろうか。再び深くして、また2ヒロに戻す。
松田は、これも努力だという。
2ヒロにして釣れたとしたら、壁を一つ乗り越えたことになる。
「人間はみんなそれをせん。するか、せんかによって開眼する。だから、努力は天才に勝るとワシは言うんや」
松田の言葉を借りると、下手か上手いかの差は少ししかない。
しかし、上手な釣り人がウキ下を2ヒロまで上げることができて、下手な釣り人はそれが出来ない。すると釣果となって現れる。
もっとも釣れないからといってウキ下を変えた結果、それが反対に作用するケースもままある。
釣り上げないと魚は警戒心が無くなり、2ヒロまで浮いてくる。そのときは、ウキ下を深くして3~4ヒロを流している。諦めて再び浅くすると、今度は潮が悪くなって魚が下がる。
釣りをしている間はずっと、常に頭の中で、これでいいのかどうかと疑問を抱き続けることでしか、これは解消できない。
〇探る釣りは最後の手段
グレのタナが頻繁に変わるようになったのに対応して、
探りながら仕掛けを流す釣り方が徐々に広まりつつある。
しかし、松田はそれに対して批判的だ。
「魚はアホやから、沈んでいく餌も止まっている餌も食う。ということはやぞ、理論的に考えると、ウキ下は深いほうが広い範囲を探れることになる。
しかし、それは目をつぶるのと一緒や。1つしかない答えを10もこさえとるんやからな。そしたら、甘えようとするだろう。すると、それでも釣れなくなったときはどうしようもないんや」
アバウトが嫌いな松田にとって、釣りとは、ピッタリ合わせないといけないものなのだ。
本当に釣りが上手くなりたいのなら、1尾ずつウキ下を変えたほうがいい。
流れやエサ取りの動き、アタリの出方を見て、ウキ下をどんどん変え、鉛を替えてゆく。
すると、きっちりした答えが出る。
その積み重ねが釣りの技術になる。松田はそう考えている。
ただし、全面的に否定しているわけではない。
テクニックの一つとして身に付け、他の方法が全く通じないときの、いわば最後の手段として使うのなら一向に構わない。
最初から、安易に、ただグレを釣ればいいのだという意識でやることに批判的なのだ。
ー松田稔のグレ釣りバイブル・釣ってなんぼや! 1997年出版より引用ー
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