今月発売の「磯釣りスぺシャル」7月号特別版。
今月号はフカセの進化、次世代について面白い記事が満載ですね。
もちろんモノつくりにおいては会長も掲載されています。
変化していく環境、それに伴う釣り具製品の進化。
会長の頭の中もどんどん進んでいます。
改めて会長が作り出した釣り具製品ってただ表に見せないだけで誰よりも多いと感じます。
進んでいく中で大事なのは基本。ベースがしっかりしているからこそ前に進めます。
そこで今回は弊社もウキの基本について改めてしっかりとお伝えしていきたいなと思っています。釣りをされる方は当たり前の事だと思っていても意外と理解していない事もあるはず。
と、いうことでさっそく始めましょう。
Question(以下Q)「ウキについて、他に教えてもらうことはありませんか?」
会長(以下、太文字)その質問は抽象的やな(笑)何をしゃべったら良いのか見当がつかんわ。
それより、現にわしが使っているウキのことで君は何か感じたことはない?
Q「あります。松田さんの釣りを見ていると、ウキが波をかぶるんで不思議に思っていたんですよ。これは今日の風を計算してですか?」
あーこのウキの状態な。これは故意にこうやっとるんや。わしの場合、釣りはほとんどこの状態にして釣ってる。特にグレ釣りではな。君はグレ釣りにどんなウキを使ってる?
Q「ほとんど寝ウキばっかりですね。」
あーそうか。波によく乗るんと違うか?
Q「乗りますねぇ。サーファーみたいですわ(笑)」
寝ウキでアタリがでるのはウキがどんな状態の時や?
波に乗るウキやったらよくわかると思うけど、アタリはウキが波頭に乗った時が多いんか、それとも谷間の時なんか、その途中でアタるんか、どの状態の時が一番多い?
Q「どの状態と言われても、、いつも釣るのに必死ですから、そんな余裕なんかありませんでしたねぇ。松田さんは調べてみたことはあるんですか?」
何度もある。グレの食いが良いときなんかに調べてみたんよ。そしたらな、ほとんどの場合、ウキが波の谷間に沈んでるときにアタるんやな。
Q「ほほう、そうですか!また新しいグレ釣りを編み出したんと違いますか?」
そうや。釣り師は常に模索しなければ上達も止まってしまうんでな。
ウキが波の谷間にあるときにアタリがでることが多いというのは特に最近の傾向なんや。
昔はそんなことはなかった。それじゃ、昔と今ではどこが違うんかと考えたらグレの数しかないわな。グレの数が激変した最近になってウキに出るアタリも違ってきたとすると、何か理由があるはずや。
わしは、ウキから刺し餌までしっかりと張って仕掛けを流すようにしてる。そしたら浮力のあるウキを使っていればウキが谷間から波頭まで浮き上がって移動すると当然、刺し餌もウキが浮いた分だけ上へ動く。ウキが波頭に上がった状態でグレが食うたんであれば、引き上げられるようにして浮いていく刺し餌をグレが追いかけていって食った、と考えられる。
昔はそれでもグレが食うとった。ということから考えられるのは、
競争してオキアミを拾わないと他のグレに遅れをとるということや。
Q「確かに考えられますわ。」
最近になって波頭に乗った状態ではアタリが極端に少なくなったんは、グレが上へ浮いていくような餌を見向かんようになった証拠やと考えられる。
①グレの数が減ったこと
②年中釣り師に追い回されて賢くなったこと
が原因やろうなぁ。別に競争してオキアミを拾う必要はないんよ。
そやからちょっとでも不自然な動きをする餌には見向かんようになってると判断したんや。
Q「そうか。松田さんのグレ釣りは、やっぱり科学的に根拠づけられてるんですねぇ。」
科学的と言えるかどうかは知らん。話を元に戻すと、グレが上へ浮くような餌に見向かんのであれば、波によく乗るようなウキはいらんのよ。逆に言えば、波乗りするようなウキやと「食わす攻めの釣り」には不向きといえるわな。
Q「確かにね。だから松田さんはウキの浮力を殺すようにした?」
それもある。まだ二つほど理由があるな。一つは、最近のグレは、賢くなった為なんか、刺し餌を一気に吸い込むようなことをせんと、いったんはくわえて走るグレもいるんと違うかなと思うたことや。
浮力のあるウキを使っていた時や。確かにグレのアタリやった。
素バリを引かされた経験を何回もしたからなぁ。何でだろうと思ってウキが引き込まれるのを見とったら、ちょっと持ち込んでは止まり、また少し引き込んで止まるんよ。
スーッと一気に持っていかんのや。
ウキの抵抗を感じたグレが危ぶんでるんやなと判断できたんや。
Q「へーえ、グレもなかなか考えるんですねぇ。。」
感心しとったらいかんな。ここからが釣り人の上手い下手の分かれ目になるんやから。
グレが学習しとるんやったら、わしはその上をいかんとグレには勝てん。
不自然な餌は追わんし、ウキの抵抗にも敏感に反応してるんや。それなら、その障害になってるウキを何とか考えようと思うた。
抵抗が障害になってるんやったら、極端な言い方をすれば、ウキの浮力は邪魔になるのと違うか、と考えたんよ。アタリはウキの持ち込まれ方でわかるんでな。
Q「そうか、それで松田さんはウキの浮力を出来るだけ少なくしているわけですね?」
そうや。そのため、わしはウキの浮力を0に近い状態にしてるんでな、そやから波がくればかぶるんよ。さっき君が、わしのウキが波をかぶってるのを不思議やというとったけど、理由はこんなことなんや。
Q「なるほどね。これだけしっかりと解説してもらいますと、よくわかりますわ。」
グレに対するウキ、特に最近のグレに対しては、ウキは引き込まれる際に、平均して同じ重量感を持たせるものがベストやな。浮力があって、消し込みの時、浮力の抵抗で重量感が増すようなウキやと、グレはくわえた刺し餌を放してしまう。そやから、ウキはできるだけ浮力を殺して0に近づけたほうが良い結果が出ると思うわ。
Q「なるほどねぇ。で、もう一つの理由は?」
グレのタナとの関係やな。
このごろのグレは、めったに水面近くまで浮いてこん。多少深みのあるところまでしか浮かん。わしは効率的なグレ釣りをしたい方やけん、その日のグレのタナを探り当てたらウキ下をタナの深さにきっちり合わしてやるんよ。
そしたら波乗り上手なウキを使ってみい、どうなる?
ウキが波頭に乗る度に、ウキ下がタナからはずれてしまうやろう?
Q「そうですねぇ。確かにウキ下がコロコロかわることになりますわ。」
そうやろう。刺し餌をタナからはずさんようにするためにも、波乗りするようなウキを使ったらいかんと思うなぁ。
松田さんは自作のウキに絶対の自信を持っている。
それは、釣りの現場で実験し、観察して得たグレの動きや習性に合わせて改良に改良を重ね、最良のものを作っているからだ。
常に攻めの釣りをすることを心がけ、小さな釣りグッズと言えどもおろそかにしない。
より合理的なものへ改良することに心をくだいている。しかも中味が濃い。
だから松田さんが使う道具は、外見だけを真似ても全く意味をなさないのである。
たとえばご紹介したウキ。見た目には、他の釣り人のウキと何ら変わっているようには見えない。しかし、性能が全くと言ってよいほど異なっている。
ウキに対する期待は、一般的にはアタリをとることにあると思う。
ところが松田さんは違う。食わす道具と考えている。
アタリをとるのは二の次三の次に置いている。まず道具の改良に先立つ視点が異なるのだ。
ー松田稔のグレ・チヌ攻撃的戦術 1994年出版より引用ー
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